硫化水素吸着剤
KNK-301
Removal of Hydrogen Sulphide Compounds
目 次
1.硫化水素吸着剤とは
2.脱硫プロセス
3.酸化亜鉛系硫化水素吸着剤(KNK-301)の硫黄捕捉量
4.KNK-301の外観と性状
5.KNK-301の特徴
6.他社品との比較データ例
7.KNK-301によるナフサ吸着脱硫実験例
8.酸化亜鉛系のS(硫黄)ピックアップ量について
1.硫化水素吸着剤とは
硫化水素吸着剤とは、石油精製プラントのナフサ精製や都市ガス、アンモニアガスなどの燃料ガス、各種合成ガス用原料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する為の乾式吸着剤です。
硫黄化合物は、触媒毒となって他の触媒の性能を低下させるのみならず、時には製造装置を腐食させる等の悪影響を及ぼす為、脱硫工程はこれら製造・精製プロセスの重要工程であります。
工業的に脱硫方法としては、乾式法と湿式法に大別されます。乾式法には化学反応によって吸着除去する方法(酸化亜鉛系吸着剤、鉄系吸着剤)と物理的に吸着する方法(活性炭系吸着剤)とが有ります。
湿式法は、薬液洗浄による方法で硫黄化合物濃度が高い場合の予備脱硫が該当しますが、これによってある程度低濃度化してから乾式法を使用するのが経済的であります。
2.脱硫プロセス
本触媒は、乾式法で使用する酸化亜鉛系の化学的吸着剤ですが、その脱硫プロセスを石油精製プロセスの中の「水素製造プラント」を例に説明致します。
水素製造プラント
脱硫プロセス:原料ガス(ナフサ)に水素ガスを吹き込んで原料ガスに含まれている硫黄化合物を硫化水素に変換し、これを硫化水素吸着剤(酸化亜鉛系触媒)に吸着させ、酸化亜鉛を硫化亜鉛に置換させて吸着捕捉する。
3.酸化亜鉛系吸着剤(KNK-301)の硫黄捕捉量
ナフサあるいはガス中の硫黄化合物は水素によって硫化水素に変換させますが、これは次の化学反応式にしたがって硫化亜鉛に置換されKNK-301で捕捉されます。
H2S + ZnO → ZnS + H2O (化学反応式)
34.1 81.4 97.5 18.0 (分子量)
即ち、81.4gの酸化亜鉛は34.1gの硫化水素を(硫黄に換算すると32.1g を)捕捉することができます。KNK-301の酸化亜鉛純度は90%ですから1kgのKNK-301は0.355kgの硫黄を理論的に捕捉することができます。
実装置においては、反応塔を2基並列に設置し、切り替え運転を行うことにより、ほぼ理論量の硫化水素を捕捉させることができます。
4.KNK-301の外観と性状
・外観形状
3mmφ 5mmφ
・性状表
形状 球体 球体 サイズ 3mmφ(平均) 5mmφ(平均) ZnO含有量 90wt% 90wt% 破壊強度 2.7kgf 4.8kgf 充填密度 1.17g/ml 1.20g/ml 比表面積 50m2/g 52m2/g
5.KNK-301の特徴
@ ZnO含有量や充填密度を大きくし、H2S吸着能力を高めております。
A 比表面積(S・A)及び細孔容積(P・V)を大きくし、H2S吸着速度を大きくしております。
B 形状を球体とする事によって、円筒形状に比べて幾何学的表面積を大きくし、H2S吸着速度を大きくしております。
C 適用温度域が広く常温からも使用可能ですが、通常350〜400℃で最も効率的に働き、H2Sを 理論的に近い値(二塔式で30wt%:wt S/wt ZnO, SV=1,000hr-1) まで吸着することが出来ます。
参考使用温度範囲
@ 不活性ガス又は還元雰囲気での最適使用温度 300〜400℃
A O2を含有又は酸化雰囲気での最適使用温度 常温 〜100℃
触媒名 KNK-301
(呉羽油脂工業製)他社製 形状
BET比表面積(m2/g)
細孔容積(ml/g)3mmφ球形
62.7
0.5043/16"φ押出成形品
47.8
0.313化学組成
(wt%)ZnO
Al2O3
CaO
SiO2
Fe2O3
TiO
MgO
NiO
Cr2O389.6
3.6
2.4
0.4
0.1
0.13
-
-
-79.6
3.4
2.5
1.0
1.6
-
0.98
0.04
0.09
*注 細孔容積は、水銀圧入式ポロシメーターで測定
化学組成は、ICP発光分析法で測定
8.酸化亜鉛系吸着剤のS(硫黄)ピックアップ量について
@ S(硫黄)ピックアップ量とは、 プラント等において充填すべき吸着剤の量を決める際の設計値として使用される量で、15%(理論値の38%)の値を採用されている様です。
A 当社では、KNK-301の製造ロット毎に5,000kgを1ロットとして硫化水素吸着活性試験により、S(硫黄)ピックアップ量の性能チェック(n=1)をしています。
B この吸着活性試験は、当社例で説明しますと加速試験である為、試験用の入口硫化水素濃度を30,000ppmという高い濃度で供給し、60mlの容量に充填した被試験剤(KNK-301)を通過後の出口硫化水素濃度が入口側濃度の100分の1の濃度(300ppm)に抑えられるまでの吸着時間(hr)を測定して、次の式により計算で求める方法を採用しています。
Sピックアップ量(%)=充填容量(60ml)x吸着時間(hr)x硫化水素濃度%(0.03)xSの密度
(1.3115):25℃x吸着歩留(0.995)x100/充填重量(g)
仮に吸着時間が、5.33hr、充填重量が65.3gであったとするとSピックアップ量(%)=19.2%となり、設計値の15%に対して、十分合格しています。 また理論値38%に対する吸着効率は、19.2x100/38 =50.5% になります。
以上